旧館は昭和30年代の前半の建物です。合掌造りという木造軸組の建物、梁や柱はもっと昔に建てられた家の、古い木材を使っています。要するに70年とか80年前の材料をうまく再利用して組み上げているんです。大工さんの腕の見せ所、そして職人さんが生き生きと仕事をしていた時代なんでしょうね。こういう建物はいくら古くなっても直せる。中越地震にも耐え抜いた力強さ。言葉では言い表せない何かを感じます。スクラップアンドビルドもいいけれど、残してみたい、直してみたい、そこで楽しんでもらいたい、今はそんな気持ちで再生に取り組んでいます。
長岡は城下町、新しい箱づくりや商業施設もいいですが、長岡らしさってどんなとこ、人も場所も生まれた時からオンリーワンの存在。だからこそ何をもってナンバーワンを目指すのかが大事だと思うんですけど、どうでしょう。地域の活性化のために新しい箱を作り、それを起爆剤にしようという考え方は終わったように思います。一瞬の効果しか生み出さないし無駄遣いになってしまう可能性が大きい思う。自然環境を守り、古い物をリノベーションし、街の歴史と記憶を留める町づくり、地域づくり。その基になるのが農業、林業、水産業という自然との共生と地場のものを使った食文化や商い。何でもかんでも時代の最先端を選ぶ必要はなく、少し時代に逆らって見つめなおしてもよろしいのではないでしょうか。魅力的な物や事、足元にたくさんありますよ。長岡はツーリストにとって、ナンバーワンの場所になろうと思えばなれるかも。人は旅人で、旅先での感動を求めているのではないでしょうか。