2011年7月号のフリーアンドエイジ。雑誌の中で林望さんの記述を引用させていただきます。
“イギリスにおける本物とは、ごくありふれたところにこそある。イギリスの良さは無名性の中にある。特に「住」に関しては、日本のように有名建築家のナニガシが建てた家をありがたがる価値観は皆無。むしろ無名の職人がコツコツ作り上げた家、それも古ければ古い家ほど価値があるとみなされている。家に対する概念は、日本とイギリスは対照的。日本の木造家屋で25~35年の対応年数、コンクリートで35~40年位なんでしょうか。こわしてつくる、スクラップアンドビルドが日本の家の主流。日本は土地ばかりに価値が偏って建物には古くなるとほとんど価値が見いだされず、こわしてたてるを繰り返すため、日本の家並みには歴史の香りが見当たらない。新しい家をありがたがる価値観がそうさせた。”
と記されています。耳が痛い話です。さらに、住み方に関しても、
”イギリス人は独身者は1LDKのフラットという家に住み、パートナーができたら2ベッド、3ベッドのテラスハウスに移り、結婚したら子供の人数によって2軒1棟の住宅に移る。子供が巣立ったら再びテラスハウスに移るというように、家を建て替えたり、建て増しするものでなく、自分のライフスタイルに応じて住み替える発想が根幹にある。土地と家は一緒、セットとして考えられている。家にしても築500年ともなれば非常に高価。築100年位はいまどきの家、まだまだ新しい。こういった家には分厚く頑丈なドアがついている。だから長持ちする。それを下支えしているのがイギリスのクラフツマンシップ、しかも無名の職人の技術が活かされている。”
こういう記述を読むと考えさせられることが多いと思いませんか。私は古道具やからスタートし、古着、中古家具、ユーズド、ビンテージ、中古車、中古の家、古くなって見向きもしない倉庫・旅館を直し続けてくると、林さんが書かれることがよーく理解できます。世の中の流れに、すこし逆らって生きてみると、意外と新発見があります。本物ってなんだろう。大切にしなければならない事ってなんだろう、ってね。本来エコロジーって、大切にすること。一生つきあってみたくなる人や物に出会って育むことかもね。