かれこれ10年以上、大々的なセールを打ち出すことをやめた。ただ、展示品の入れ替えで、展示品を定価より安く売ることはある。
定期的にセールをやったり、売上を何とかしようとキャンペーンをやったりした。お客さまから「次はいつセールをやるの?」という声を聞いた時、複雑な気持ちになった。値引販売は、プロパー価格で買って頂いたお客さまの信頼をなくすと思ったからだ。
セールやキャンペーンという値引販売は「小売の性」であり、覚醒剤になってしまい、二度とプロパーに戻れなくなってしまう。「価格は価値であり、信用であり信頼」だとすれば簡単ではない。時間もかかる。他で同じ物を安く売ることもある。今はネットでも買える。
小売を取り巻く環境がどんどん変化していく中で、ぶれない考え方で「商い」をやることは非常に難しい。
価格破壊ということが革新的に思われた時もあったが、結果として生活破壊になったこともあった。「安さ」はありがたいが、多くを売らないと商売にならない。そして、「安いニッポン」なんて言われ始め、賃金も上がらず、しかも人口も減っていく。地方はものすごいスピードで生活者が減っていく。この現象でどうやって生き残る?
「おうち」なんて言っている場合ではない。働き方がどうのこうのなんて言っている場合ではない。なんとかなるだろう、ではない。
全部、「ふざけるな!」からやり直す必要がある。流れに乗っても乗らなくてもダメになることが多いと覚悟して、目の前の当たり前をとことん掘り下げて特別なものにするしかないと思う。
それでも、「絶対」ということがない。死ぬまで不安と一緒に生きるのが本当の当たり前なんだろう。