先日ニュースで、日本を代表する大企業の集団の長が、日本の賃金を上げるには「生産性の低い利益の出ない中小零細企業は市場から淘汰しないとダメだ」というような発言をしていた。
こういう言葉を口にしている人の表情は、反論も反撃もできない人をじりじり追い詰めることからくる快感を引き出している人間の顔で、昔、いじめをしていた子供の顔を思い出した。
言っていることは間違ってはいないが、弱くて発言できない人に向かって常に攻撃してくる。日本の99%以上は中小零細企業で、そこで働いている人は7割以上、さらに経営は黒字企業より赤字企業の方が多いだろう。
立場上、大きくて強い大企業のトップに対し反論や反撃はできない弱い立場の人や、一生懸命歯をくいしばって汗を流して頑張っている小さな会社の経営者、思い通りに行かない現実を前になんとか生き残ろうと努力している。
冒頭であんな発言をする経営者はおそらくオーナー社長ではないだろう。
池井戸潤の小説で、中小企業の社長の役割みたいなセリフがある。「社員30人ぐらいの会社が倒産したら、路頭に迷うのは30人ではなく、家族も含めたら100人以上だ。しかもその半分は子供だ。その彼らこそ一番の被害者になる。だから、高級車に乗ることや高級住宅に住む社長は主役にならない。」
賃金を上げることが目的ではなく、なんとか会社の売上をつくり、働く社員30人の生活を守る。そして、何のために自分達の会社が存在するのか、本当に自分達は役に立っているのか、役に立っていないから売上につながらないのではないか、物があふれ、情報があふれている今、何が必要とされているのか、自分達は何ができるのか突き詰めて考えることが大事なんじゃないか。
「作れば売れる」時代ではない。利益を出さない会社はつぶせばいいということではない。「答」などないのに、立派な大人が「いじめ」を平気でする。この「いじめ」もなくならない。
だから、小さくても「ふざけんな」で生きていくしかない。