益子での修行を終え、地元長岡に戻って来られた岡﨑さん。新たなスタートから現在までのお話をお伺いしました。
★こちらに戻って来られてからはどうでしたか?
「クラフトフェアが立ち上がったのは戻ってきて1年目。今から10年位前です。最初は全然売れなかったけど実行委員だからでなくちゃいけないっていうのがありました。最初は身内だけで開催して、2回目からは県外にも声かけて7回目からは出店したくてもできない人が出るほどになりました。
出店する人たちはほとんど今週はこっち、来週ははあっちと動いている人が多いので徐々に応募者が増えて、顔が分かるお客様も増えました。」
★私も1度クラフトフェアに行ったことあるんですよ。2011年のファミリーランドの駐車場での開催の時だったと思います。
「それ2回目です。」
★あの時はたくさんのお店が出店していましたよ。
「70、80店舗出てました。お店をやっている方やバイヤーも結構います。益子なんて海外からも。」
★クラフトフェアって作家さんとお店のバイヤーさんを繋ぐ場所でもあるんですね。
「でもクラフトフェアあってよかった、というか作ってよかった。
そこからいろいろなつながりができました。行った先に誰かがいて紹介してもらって。
超ラッキーですよ。ラッキー以外なにものでもない。そんなこんなでLISで展示もできましたし。SHSに置いて欲しいとは思ってたけどまさか店長からぜひって声かけていただいて。」
★十分杯(長岡藩牧野忠篤ゆかりの杯)を作るきっかけはどんなことだったのでしょうか?
「近所の方からの依頼で、実はこういうものがあってつくってくれないかって。まだ自分自身あんまり売れてない時だったからそんな売れるか売れないかわからないようなものやりたくないなって最初おことわりしたんですけどそしたら別のところからまた依頼があって、作れたらってことで。5年くらい前からですかね。最初は10個つくっても5個くらいだめになって。」
★その後長岡大学からお話があったんですよね?
「大学でゼミを始めたばっかりなんだけどこの十分杯を広めていきたいので作り続けて欲しいという話があったんです。その後市のイベントに十分杯の作り手として参加させてもらって、これはやめるわけにいかないものになったなと思いました。」
★何回かスーパーでお会いたこともありましたがお寿司は趣味ですか?(岡﨑さんはインスタグラムで時々握り寿司をアップしています)
「料理は好きだったんです。道具も工業製品じゃなくて人が作ったものっていうのは古びていくのもかっこよく壊れていくっていうか。どうせならステンレスの包丁じゃなくて錆びる包丁が良いですね。やっぱり手入れをしながら育てていかないと。」
★お寿司は魚から捌くんですか?
「もちろん。」
★ご自身で握っていらっしゃるんですよね?
「下手くそですよ。海苔巻なんて具が真ん中にいかないし。料理人になりたかったんですよ。包丁使って裁くっていうのがかっこよくて。寿司の職人っていうのはもしかしたら我々以上に毎日同じことやってるわけじゃないですか。ご飯を炊き、魚を捌き、それを切り身にする。単純な作業を毎日毎日繰り返すことによって無駄な動きが無くなって、所作というか美しい動きになるんだと思う。かっこつけるんじゃなくていつも一定な動きが無駄なくできるっていうのがかっこいいなと憧れました。」
★岡﨑さんの作品は基本的には日常で使いやすいものだと思うのですがそこにあるご自身のエッセンスみたものは何でしょうか?
「自分で料理を作ってこういうものがあればいいなと思うもの。以前勤めていたつかもとの東京店は益子焼だけでなくて全国の焼き物を扱っていました。そういった全国の民芸品ていうのは使いさすさが重視で使いやすいっていうことはそれが美しいかたちだということを学びました。食べるものも多様化してますし地方性もあります。まず形がまずよくなければそれは使いやすい器とは言えませんから。」
★★★
もともと何かを作ることが好きだった岡﨑さん。もの作りの熱意がカタチとなり、作品が人と人とをつなげ、たくさんの出会いを経て、長岡店ともつながってるんだなと 思いました。
岡﨑さんに出会うまでは「陶芸作家」というと無口で気難しそうというのが私の勝手なイメージでした。しかし岡﨑さんは物腰柔らかく、素人の私の質問にも丁寧に教えてくださいました。こんな器を作って欲しいという私達の要望にも快く応えて頂きました。
「自分が作りたいもの」を作ることより、「使う人が使いやすいもの」を作ることを大切にしている岡﨑さん。「岡﨑さんの作る器はシンプルで飽きない。」「私たちの暮らしに良く馴染む。」お客様からそんな声を聞きます。それは岡﨑さんの人柄が作品に表れているからだと今回お話を伺って思いました。
岡﨑さんにリクエストしている器や、新しい展開の計画もあります。今後の活動と次の新作も楽しみにしていてください。