思わず深呼吸したくなる。
建物の中にいながらにして、そんな気持ちになった。
壁面いっぱいのガラス窓。
初夏の濃い緑からこぼれる木漏れ日が目に眩しい。
長岡は高畑町、かつては長岡の政財界人に愛され、奥座敷と呼ばれた由緒正しい温泉旅館の跡地に『S.H.S長岡店』はある。
地元の人間から忘れ去られた場所を蘇らせた。
そこには現代の消費社会とは一線を劃す“再生”への思いがある。
この場所を見つけたと同時に、この場所を授けてもらったと思った。
時間に負けない美しいもの、先人からの宝物を大切にする、それが『再生』であり、リノベーション。
そこにかかる、コスト・技術・アイデア・その他、それだけのものを懸けるべき価値がこの場所にはあった。
今の時代はファッションも食べ物でも、なんでも“ファスト”だけど、未来に繋げてゆくものがなくてはいけない。
本当は自分の足元に大切にしたい物がある。
忘れ去られた地域の宝に愛おしさを感じ、新しい命を吹き込む…、一過性のものでもなく、永く永く続くものを…、それが再生であり、私達自身をも再生させてくれるに違いない。
緑と光の溢れる森の時間に、ふとそんな思いが頭を過った。
このコピーは11年前の5月、ちょうど今頃『S.H.S長岡店』がオープンの時に打ち出した広告でした。
担当してくれたコピーライターの方に感謝しています。
あの頃、『あんげな場所に何するが』と言われるところから店作りがスタートして、『こんげふうにしたかったが』と言われた。
今つくづく感じることは、再生することより継続することが如何に難しいかを、マジで、マジで、感じています。
私の口ぐせです、『どこ』で・『誰』と・『何』をするか。
商売としては儲からない仕事です、好きだからこそ続けている。