家具には様々な材料が使われている。
私は35年位前に米軍の払い下げ家具に出会うまで、家具にはそれほど興味があったわけではなかった。
米軍の基地や、米軍ハウス、そこで生活しているアメリカ軍の家族、そんな環境に触れて、何となく今まで経験したことのない気持ちよさを感じた。
そんなに広くない平家の米軍ハウス、そのハウスの中のダイニングテーブルの大きさに驚き、リビングのスリーシートソファの大きさ、キャビネット、ベッドルーム、そして土足で部屋中を歩くという生活文化、とても日本の生活では考えられない空間がそこにはあった。
そういった払い下げの家具を扱う仕事を通じ、徐々に家具に使われている木材の種類がマホガニー材とか、オーク材とか、パオン材、チーク材だということを初めて知る。その材質によって価格も大きく変化する。どんな国の、どんな空気で、何十年、いや何百年も経たないと使えない材料もある。今は、そんなことどうでもいい、安くて、そこそこのデザインで、皆が買っていれば安心。値段以上の価値とかいう『CM』も流れるし、ま!いいか。で決まる時代。
でも、何気ない出会いから興味がわき、なるほどなぁという感覚が生まれ、最終的に自分なりの何かができていく。私はお金が無かったから、アメリカと言えば米軍基地をうろうろするしかなかった。新潟から何時間もトラックを運転して、基地の周りのスクラップ屋を見ても買いたいものが無かったり、無駄と思えることの繰り返しの中で、様々な経験をしたことが、私の素材であり、本質でもある。
あの頃の米軍基地の周りには沢山の店があり、沢山の人が集まっていた。今はそれほどでもない。そのことはどこの中心商店街も同じ、商店とか、商売とか、商いとか、時間と共にどんどん変わる。スクラップ アンド ビルドという流れの中で、家具であろうが、何であろうが、一つの見方として、材料は何だろうとか、どこで誰が作ったのだろうとか、なぜこれでなければ駄目だと言って買う人がいるのだろうかとか、興味がわくことが人間として大切だと思う。
スマホの小さな画面で、人と同じように指を動かし、インスタグラムがどうのという世界観ではなく、人も物も、素質や素材や本質に出会わないと駄目だと思う。
知った気になるだけで満足していると、五感は育たない。