昔、ある取引先からやっと商品を仕入れることができるようになった。数年して実績も積みあがったのでさすがに認めてもらえてるだろうと思い「仕入れの掛率をもう少し下げてもらえませんか?」と尋ねた瞬間、「おたく以外に代わりなんていくらでもいるんだよ」とその会社の社長に言われた。
あれから20年以上たった。今でも大切な仕入先だ。ただ、その当時の社長は渡り鳥のように様々な会社を転々とする人だった。
時代の変化、特にネットの普及は小売業全体に大きな影響を与えている。「変わりはいくらでもいる」なんてなんとなく「日本昔話」のように思う。
地方は人口減少が進み、働く人の代わりはいくらでもいるなんていう状況はなくなった。人口減はさらに加速するだろう。だとすれば、縮小する生き方があってもいい。
実は、S.H.S鳥屋野は1棟、2棟、3棟と、古い倉庫を家具・雑貨の売場として拡大していったが、どういうわけか客数がどんどん減っていった。このことは当時からしたら想定外であり、どこか自分のやり方に酔っていたのかもしれない。
でも気付いた。『食』が必要だ。それが「カーブドッチ」だった。そして3棟目の雑貨売場をなくしてそこにレストランを営業してもらった。すると、今までの倍以上の来店客数になった。
つくづく拡大だけが全てではない、縮小することも大切だと知った。改めて、衣食住という生活提供をしていかないと継続は難しい。
人は飽きる動物、変わらなければ飽きられる。そのくせ自分は変わろうとしない弱い動物。
いっそのこと代わりは全くいないと覚悟を決めてやり続けることもありだ。だから、拡大や成長から定常という選択がこれからの生き方ではないか。
小さい我々だからこそ、業種、業態を超えて協力し合っていくことも大切だろう。そのとき「代わりはいくらでもいる」ではない関係が必要なんじゃないか。