脱サラして商売を始めて、いろいろな場面で影響を受ける。それが人だったり本だったりする。俺の場合はテレビドラマだった。
ちょうど今から40年ぐらい前。「北の国から」というドラマの主人公、黒板五郎とかぶった。もろ俺だと思ったぐらいだ。
同じ様に思った人がもう一人身近にいた。当時、アクメの経営者の安田さんだった。東京から仕事で新潟に来た時、夜はいつも古町の居酒屋「古里」で飲んだ。酔ってくると必ず話し出す。
「北の国から」のドラマのシーンで、「純」が東京へ行く駅まで送っていく時、泥だらけでしわくちゃな1万円札を手渡す。ここんところが泣ける。何度見ても泣ける、と二人で盛り上がっていた。会うたびに金が無くてどうしようという時、必ず誰もが経験する、いや、しない人もいるだろうけど、こんなことでなんとなく、きびしさとやさしさと、ちょっとした希望みたいな思いが生まれた。ドラマも少なからず生き方に何かを与えてくれる。
去年嬉しかったのは、大工の土田君が「北の国から」黒板五郎の言葉という、幻冬舎から出版された本を我々の店の40周年に合わせてプレゼントしてくれたことだ。そういえば、彼が参加してくれた頃、「北の国から」のドラマ観るといいよ、参考になるしおもしろいよと言った覚えがある。その後、長岡で倉本聰の講演会があったとき、2人で聞きに行ったこともある。
実は、「ひろう、もらう、かりる」という仕事の基本はここから来ている。
「純」を演じた吉岡秀隆が、去年の12月「Dr.コトー診療所」の映画に出演して、16年ぶりに見に行った。「Dr.コトー診療所」のドラマは2003年7月にスタートした。ちょうどS.H.S鳥屋野をオープンして2年目、なかなかうまく行かずに苦しんでいた。このドラマは、あんな場所といわれる離島で医療に従事する若い医者が島の人達から徐々に信頼され、なくてはならない存在になっていく内容だ。医療と商売は一緒にはならないが、だれも見向きもしないような場所にあえてそこが大切な存在であり、それを運営するのは人だということ、そんなドラマがヒントで、「まち、みせ、ひと」につながった。
まちに必要とされる施設をつくり、その施設にふさわしい人が働く、あるいは生きることで役立った存在になっていくのではないか。たかがテレビのドラマでも、自分の仕事に当てはめて考えて行動することで、自分達のドラマができていく。
以外と、経済論や戦略本よりも、もっと大切な何かをみつけることができるような気がする。