自分も含め、昭和生まれの人間はクレームかカスハラかなんて分けて考えることはなかった。
なぜなら「お客様は神様」というとらえ方が当たり前だったからだ。「経済成長」という希望が全てを解決した。今のように殺伐としていなかった。
例えば、「すみません」と言えば、「次からは気を付けろよ」で済んでしまう。また、お客さんから「あのさあ、こういうときはこうするんだよ」と教えてもらうことも多かった。
経済成長が止まり、努力しても思うようにいかず、鬱憤の晴らし場所のない人間は匿名で誹謗中傷することを覚え、抵抗も無くなっていく。
やり方は違うが、昔から「いじめ」や「嫌がらせ」はあった。なくなることはない。
こんな殺伐とした時代に生き残っていく方法は2パターン。
強い者の金魚の糞として生きていくか、弱い者同士で協力し合って生きていくか。
いくら法律をつくっても人間の本性である「いじめ」はなくならないだろう。
ただ、言われたことが果たして「いじめ」や「嫌がらせ」なのか、とらえ方でだいぶ変わってくることがある。
新聞に記事があった。タイトルは「勝てぬ子」。
パリで開催中のオリンピックでフェンシング金メダルを獲得した加納選手についての記事だ。「こんなに勝てない子もいない」と言われた時期もあったそうだ。
「どんなにつらくても音を上げない」「直せといったことは必ず次の練習までに直すこと」
いろんな子供が五輪選手になりたい、プロになりたいというがこの約束を守ったのは加納選手だけ。
我々の商売もきびしい。コーチは「お客さま」かもしれない。
神様とは言わないにしても、「嫌がらせ」ととらえるか、逆に自分の仕事の質を高めるための手段とするのか。
その結果は4年後くらいに出始めるのではないだろうか。