城丸正ブログ

『安い』ニッポン

2021.08.13

ずーっと日本製が国内外の人から支持されたのは、高品質だと思っていた。

ところが、海外からみると際立つ『日本の安さ』が『インバウンド消費』にもつながった。

ある中国人が、『東京・大阪・沖縄・北海道…どこに行っても美しくておいしい、そして安い!』『爆買い』なんていう言葉もあった。

人口減少などで個人消費が伸び悩む中で、このインバウンド消費は日本の景気を大いに支えた。

だが、コロナ禍で『一変』してしまった。

『安さ』は我々生活者にとっても日本にとっても大切なことなんだけど、実はこれについての本が出ている。『安いニッポン』価格が示す停滞という本だ。

この本の記述の中で、『安さ』は生活者からみると『生活しやすい』が、供給者の側からすれば収益が上がらない。すると賃金は据え置かれ、消費が動かず、需要が増えない悪循環になってしまう。いったん下げた価格は二度と上げられないから、企業はなるべく値下げせずに最低限までコストを下げようとする。果たしてこれでガラリと変えるようなイノベーションが生まれるのだろうか。そして、『安さ』はまさしく日本の停滞と結びついている。

賃金と物価が並行して上がっていく国でなければ成長や発展はしない。コロナ感染拡大で外出自粛を迫られ、経済活動も大きく制限される中、『安いニッポン』はどうなっていくのか。という書き出し。

『安い』『お得』『さらにお値引き』。もっともっと買っていただくために、商売をやるうえで当たり前になってしまった。

そして、もっと『安く』作るには日本じゃ無理、中国だ、いやベトナムだ、そのうちアフリカだ、『安く作る』を求めてグローバル、そのうち『宇宙だ』になるのか。

テレビで商売で成功した人が宇宙へ行き始めたのはなるほどと思ったりする。

『安さ』で勝てるのはほんの一握りだろうし、『高価格』で勝てるのも一握りだろう。

だが、安く大量に作って、大量に売ることはできない。

だからどうする。

この本は面白かった。

小商いでも生き残る道を探し、流れを感じ、敢えて流れに乗らない、いや乗れない。

そんなことを悩みながらやり続けられることが幸せなんだと思ったりする。

古い人間ですから、紙・文字しか頭に入らない。

何度も何度も読み返す。

本は最高の先生でもある。