S.H.S鳥屋野の中に洋服直し「コア」という店があります。オープンして5年目です。
責任者は入社5年の細貝海登という28歳の男性。洋服直しをスタートした時、彼を指導してくれたのは当時78歳のおばあさん。この人はタダ者ではなかった。厳しくて厳しくてすぐやめるのではと思ったが、海登は生まれて初めて本当の厳しさと愛情を感じたと言った。
その後一人になって「直し」をやり続けて、表情もチャラさが少しなくなり、「直し」の依頼が増えてきた。全身から、なんとなくではあるが、今までとは違う雰囲気が出始めてきた。
あれから4年経った昨年の7月に、齋藤匠哉という26歳、しかも2児の父親が働きたいと仲間になった。偶然にもこの2人、同じ大学の先輩と後輩。不思議です、人の縁というのは。
ただ、2児の父親が小さな洋服直しという仕事で、そんなに楽ではないし不安定かも知れないのによく決断したなとも思い、世の中には若くても変わった人間がいて、だからおもしろい。そこがS.H.Sらしさだと妙に納得したりする。
そして今年8月、日和ちゃんという26歳の女性が働きたいと仲間になった。彼女はアパレルの販売スタッフとして6年の経験がある。彼女にも彼女の服に対する思いがある。
キーワードは「直す」。この仕事をやり続ける原動力は何か。それは、服をお客さまに渡す時、期待以上の出来上がりだった場合の驚きとありがとうという表情。「また頼むね」とお願いされたらお金では代えられない喜びがそこにあるという。
「コア」という店は、着古した服、破けた服、20年前にやっと手に入れたあこがれの服をもう一度「よみがえらせる」という感動を提供している。
これは人と人とのつながりが生まれる。「もっともっと」という消費社会になっても、足元を見れば必ず「すきま」のような「場」がある。それが「店」であり、売るだけの店ではなく「直す」ことで存在感を表現するのもありだ。
洋服直し「コア」は、海登・匠哉・日和という若者3人が主人公の物語です。今日もまた一人、また一人とファンが増えている。地味ですが、若者が携わっていることも大切だし、78歳のおばあちゃんに鍛えられるなんてことはないでしょう。この経験も海登にとっては忘れられない事柄なんです。