もっと喜んでもらえるにはどうしたらいいだろうと考えている。
接客・販売はもちろんのこと、実は一番大切なのは配達と修理という仕事と思っている。
特に配達時、セットした空間やそこに住んでいらっしゃるお客様の写真を撮って、販売に携わったスタッフとともに確認したりする。あくまでもお客様の了解を得てですけど。その時、お客様の暮らしのスタイルから色々なヒントを貰ったりする。30年以上昔に買っていただいたアメリカ軍の払い下げ家具を上手くマッチさせて暮らす方や、多くの発見をさせていただく。
印象的だったのは、日本の伝統的な家財道具と我々が提案するカジュアルでありモダンともいえるインテリアを上手くミックスされているスタイルが絶妙であったりと、スタートが日本の古道具やリサイクル、そしてアメリカ軍の払い下げ、イギリスのアンティーク、アメリカのビンテージと、色々と回り道をしてきたことが意外と活かされているもんだなぁと思う時がある。
一直線に目的に向かって走り抜けることも大切だが、多くの人がああでもないこうでもないと回り道する。それも大切で、必ず生かされる時がある。
2009年に発売されたアクタスヒストリーBOOKの中で、お客様の声というのがある。そのお客様が『日本には家財という言葉がある。価値ある家の財となるものを使わなければ』と語られていたのを印象深く思い出す。これは使い捨てに対するアンチテーゼであり、ご自身の価値観を『家財』という言葉に込めている。別のお客様は違った表現で『時が経つ毎に美しくなる経年変化を楽しみたい』『時間に消費されないデザインを使いたい』、そしてさらに一人の奥様は『新しい住まいに越してから丁寧に暮らすようになりました』と。このように目に見えない『暮らし方』を家財のひとつだとすると、まさに日本人が今後継承すべきは有形、無形の『家財』なのでしょうねと書いてある。
きっとこの記述は編集長の荒木さんだと思う。
家具を届ける時、買っていただいたことに対しありがたいのはもちろんだが、それ以上に『暮らし方』『大切にしている事』『こだわっている事』などが肌で感じる。それが次に提案するヒントにもなる。
お届け時、お客様の喜んでいただいた顔と、その後のずーっと続く責任は修理であったり家のリフォームや新築するにあたっての生活提案に繋がっていく。
我々はアウトソーシングなどと波に乗れない。いや、乗らないことが逆に自分達らしいものをつくることになる。
販売・配達・修理、その先に安心と信頼があると思っている。そして、『家財』となるものを提案していきたい。