【特集】古くなった家具を蘇らせる


手入れをしながら、長く使うために

5月某日、この日は5月にしては暖かく、Tシャツ一枚で昼間を過ごすほどだった。
ちょうどS.H.Sへ取材をする予定で、屋外での作業を必要としたこの特集記事の予定日。本特集では「古くなった家具を直す(手入れする)場面を見せよう」という話になっていた。

 

特集の打ち合わせで

 

「我々は古い家具を捨てるんじゃなくて、愛着を持って使い続けてほしいんです。そのためには最初から長く使えるものを選ぶのが大切ですし、買う前も買った後もケアしていきたい」

 

という話を伺っていた。
実はこの話は打ち合わせをする度に口酸っぱく(というと失礼かもしれないが)言われ続けていることでもある。

 

好きなものを長く使い続ける。
この行為が正当かどうかという観点では、リサイクルショップから経営がスタートしているS.H.Sからすれば真っ当であり、正しいことだからこそ続けてきた店であるとも言える。
人間は何かを消費しなければ生きていけない。トイレに行ったらトイレットペーパーを使わなくちゃいけないし、お皿を洗うために水を使わなくちゃいけない。ある程度の洋服を持たないといけないし、ご飯を食べるテーブルが必要だ。

 

少なくとも一般的な日本人は、ものがないと生活できないところにいる。

 

S.H.Sがリサイクルショップからスタートしているのは、もともと軍放出品やヴィンテージ家具が好きであることもあるが、その消費活動を減らしたいという気持ちもあると言う。

 

「そりゃ、商売ですから新品は買ってほしいですけど、古いものの良さも分かってほしいと思います。1年周期で数千円のものを買い換えるより、数万円で10年使ってくれた方が愛着が湧くし、製品の背景にあるサイクルが健康になります。ウン十年使っていくにはたまには手直しも必要なこともあります」

 

そう言いながら、一台のテーブルを持ってきた。

 

このテーブルは以前お客様が使っていたS.H.Sオリジナルのテーブル。何年も使ってきたことでキズや傷みが出てきていた。更に使う箇所によって色の差が出たり、角に丸みが出たりと経年による変化が目立ってきていた。
このテーブルをどう蘇らせるというのだろうか。

 

最初に見慣れない機械を持ってきた。
「これはなんですか?」と聞いてみると、「この機械にサンドペーパーを付けて表面を削ります」と答えた。この機械は高速で円形に振動する機械で、実際はサンドペーパー(紙やすり)で表面を削っているらしい。
「最初は粗めので表面の汚れとコーティングを落とします。それからもう少し細かい目のサンドペーパーに変えて表面を滑らかにします。どんどんサンドペーパーを細かい目に変えていきます。これを3〜4回繰り返します」

 

最初に述べたように、今日はとても暖かい。暑いくらいだった日で、作業しながら体が日焼けしていくのが分かった。
テーブルは木製なので、表面を削ると木くずが舞って撮影機材も心配なほどだったが、とても慣れた手つきで黙々と続けていた。

 

「僕はものづくりのプロではありませんが、もう20年くらいこういうことをしています。もちろんメーカー製品はメーカーさんに製品の処理などを聞きながら直すんですが、たまにプロよりも仕上がりが良いなんて言われますよ(笑)」

 

それだけ続けていたら、私から見れば立派なベテランに見える。実際よどみ無く続けられる作業を目の当たりにすると、説得力があった。
そうしているうちに、天板の色がみるみる変わっていった。

 

「これは汚れともともとのコーティングを削っているんです。そうすると木の色が出てくる。これは白木ですね」

 

なるほど。どちらかと言えば木じゃなく木の上に付着したものを落としているようだ。素人感覚で、天板って削ることで歪んだりしないものか、を聞いてみた。

 

「それはまずないですね。ヤスリで削れるのはミリより更に薄い世界なので、傾いたり歪むことはありえません。心配しなくても大丈夫ですよ」

 

失礼しました。
加えてこう答えた。

 

「表面にキズがいっぱいあるじゃないですか、これを全部真っ平らにしようとするとかなり削ることになりますが、それはご依頼者との相談でどこまでキレイにするかを決めます。こういうのが味ですし、キレイにしすぎると新品でも良いじゃんってことになりますからね。ある程度変化を活かしながらメンテナンスした方がいいです」

 

確かにピカピカにしたら木の良さが無くなってしまうかもしれない。

 

<b「あとはテーブルだけピカピカにしてお戻ししたら、リビングと調和しなくなるというのもあります。エイジングが残っていると馴染みが良いですから」

 

その考え方まで及んだことはなかったな、とつくづく感心した。キズや汚れは無条件にキレイにすれば良いというものでもない。使った記憶や年数が刻まれてこそ愛着であり「自分だけのもの」なのだ。

 

不要なものを削り、必要なものを加える

次に脚と同じ色にするためにコーティングを行う。
今回使っていたのは<OSMO>というメーカーのカラーワックスだった。いかにも海外の味付けといった缶のデザインだ。
これをタオルを使って馴染ませていく。

 

凄く似た色だなと思って聞くと「これ作った時に使ったワックスなんです」とのこと。当時の使用していたワックスなら間違いないし、よく覚えているなとも思った。最初に塗り込んだものは木に染み込むらしく、重ね塗りして完成するという。

 

使った歴史はその人のもの

 

今回の特集のために天板だけ手入れしてもらったのだけど、その短時間だけでも十分に凄さが分かった。
手触りは滑らかになり、色のムラやくすみは無くなった。程よい光沢も出ていた。小さなキズは残して味は活かされたままだ。
仕上がった時に思ったことがある。

 

直してくださいと言った時に、こういう考えをもって直してくれる業者は日本にどれだけいるのだろう。
直してほしいと思える家具をもっている人はどれほどいるだろう。

 

私は良い家具を持っていないが、カンタンな手入れは自分でするとして、直したくなったらS.H.Sに絶対頼もうと思った。だが、「たくさん来てしまっても困る」という。

 

「実際直せる人が少ないのもありますが、テレビCMで『直す』というのを出してから依頼がどっと増えまして…ありがたいんですが、増えすぎるとお待たせしてしまいます。ウチで買ってないものも来てますから。まずはお電話やメールなどでお問い合わせいただければと思います」

 

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